予防はいつするの?

予防はいつするの?

  • イメージ
  • 兵庫県佐用町

    兵庫県佐用町での不活化ポリオワクチン(IPV)の
    就学前の5回目接種に対する接種費用公費助成への取り組み

    任意接種に対する接種費用公費助成を行い
    町の子どもの健康を守る

    佐用町長 庵逧 典章 氏
    庵逧 典章

    子どもは町の未来を支える存在
    子育て支援を充実し、保護者の負担軽減を図る

    佐用町は中山間地域にあり、若い世代の流出などで人口の減少が進んでいます。そこで、われわれは町を維持するためには人口を増やすことよりも、まずは住民が健康に暮らしながら地域を支える環境作りがより重要であると考え、これまで政策を打ち出してきました。なかでも子育て支援については町の重要な行政課題として取り組んでいます。子どもの健康や教育に関する制度を充実させることで、子どもたちが健康に育ち、町の将来を支えてくれるしっかりとした社会人になることを願っています。

    子育て支援に関する取り組みとして、子育て支援センターの設立や経済的な支援などを行ってきました。子育て支援センターは、人口が少なく相談相手が少ない中でも保護者が安心して子育てできるよう、子育て学習や支援を行う「ママプラザ」などを開設しています。経済的な支援としては、第二子以降の子どもを対象とした保育園の無償化のほか、給食費の補助、任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成(表)を行っています。任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成は、2013年におたふくかぜやロタウイルスなどのワクチンから開始し、2019年4月には不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)5回目接種も助成対象に加えました。

    【表】佐用町における任意接種に対する接種費用公費助成

    佐用町における任意接種に対する接種費用公費助成

    子育て支援の一環としてIPV5回目接種の接種費用公費助成を開始

    子どもの健康について熱心に取り組んでおられる小児科医の先生方から、ポリオの症状や感染リスク、IPVによる予防について詳しくお話しを聞く機会がありました。そこで、IPV5回目接種の重要性を知り、佐用町でも接種費用公費助成を開始することにしました。接種費用公費助成の開始を判断した理由は、対策が後手に回らないように早めに取り組むほうがよいと考えたためです。佐用町が接種費用公費助成を実施したことで、町の子どもの健康が守られるだけでなく、ほかの自治体も必要性に気がつき助成を始めるようになれば、町としても助成を行った意義があるのではないかと考えています。

    子どもの健康を守る地域の小児科医として
    IPV5回目接種の意義を重視

    岡本医院 岡本 泰子 先生

    接種費用公費助成で任意接種の接種率が向上
    ワクチンで予防できる疾患が減少

    内科と小児科のクリニックとして開業してから34年間にわたり地域医療を提供してきました。また、小児保健行政に携わり、保健師の方と健康診断の実施方法を確立するために意見を出し合ったり、行政へ予防接種に関する情報を提供したりしてきました。研修医時代に百日咳や麻しんによる重い脳症を発症したケースを何例か経験したことが予防接種へ積極的に取り組むようになった原点となっています。

    2013年に佐用町でおたふくかぜやロタウイルスなどの任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成が始まったことで罹患症例が激減し、予防接種の効果を改めて実感しています。

    二次障害に苦しむ可能性があるポリオ
    ワクチンで予防することが重要

    日本では、ポリオは1960年代に流行が終息し、1980年に野生株ポリオウイルスによる症例を最後に報告されていませんが、世界では現在も報告されています※1。私自身は医師としてポリオの症例を治療した経験はありませんが、ポリオの後遺症で麻痺が残った方とお会いしたことがあります。その方は、麻痺に加えて中高年になってからしびれや痛みなどの症状に苦しまれていました。子どもの頃に罹患した疾患で、何十年後に新たな症状で苦しむ姿を目の当たりにし、ワクチンでポリオを予防することへの思いが強くなりました。

    日本小児科学会の推奨でIPV5回目追加接種の重要性を再確認

    現在、訪日外国人は増えており※2、ポリオウイルスが日本に持ち込まれるリスクがあります。日本では不活化ポリオワクチン(IPV)の定期接種は、1歳を対象とした4回目接種までですが※3、IPV4回目接種後の抗体価は経時的に低下します※4
    海外には4歳以降にIPVの追加接種を行っている国があり※5、日本でもこのような取り組みが必要だと以前から考えていました。

    2018年8月に、日本小児科学会は5歳以上6歳未満を対象としたIPV5回目接種を推奨し、予防接種スケジュールに組み入れました※3。小児科学会の推奨について、ポリオの症状や感染リスクなどの情報と共に佐用町へ伝えたところ、2019年4月からIPV5回目接種に対する接種費用公費助成が始まりました。

    子どもたちの将来のためにも、ポリオウイルスに対する感染対策を行うことが大変重要であり、このような接種費用公費助成への取り組みが全国に広がることを期待しています。

    保健窓口担当者の声

    任意接種に対する接種費用公費助成を通知
    保健師がIPV5回目接種の重要性を伝える

    木村 昌子

    佐用町
    健康福祉課 健康増進室 室長
    木村 昌子 氏

    公費助成は、町内の医療機関であれば手続きなしで受けることができます。IPV5回目接種に対する接種費用公費助成は開始からまだ3ヵ月ですが、接種の報告を受けています。ワクチンで感染症が予防できれば、子どもが健康でいられるだけでなく、看病などの保護者の負担も減り、子育てにゆとりができることでよい循環が生まれると考え、行政の重要な役割として取り組んでいます。

    IPV就学前追加接種 接種費用公費助成

    接種費用公費助成の内容(2019年4月1日開始)

    予防接種:

    不活化ポリオワクチン(通算5回目)

    助成対象者:

    就学前(年長児)
    (4種混合ワクチン接種後、6ヵ月以上経過後)

    助成回数:

    1回

    助成費用:

    6,120円

    開始時期:

    2019年4月1日

    押田 淳子

    佐用町
    健康福祉課 健康増進室
    押田 淳子 氏

    佐用町では、保健師が新生児訪問の際に予防接種の重要性やスケジュールについて説明し、健診の際には母子手帳を確認して予防接種を行っていない場合は接種を勧めています。3歳以降の子どもには、接種時期が近づくと郵送による予防接種の通知を行っています。任意接種に対する接種費用公費助成についても同様に通知しており(図)、任意接種のIPV5回目接種の場合は、接種時期が定期接種の麻しん風しん混合(MR)ワクチン2期と重なるため、MRワクチンと一緒に通知するようにしています。

    【図】保護者への接種費用公費助成の通知

    保護者への接種費用公費助成の通知

    こちらの情報は取材当時のものです。
    ロタウイルスワクチンは2020年10月から定期接種になりました。
    最新の情報は、各市区町村へご確認をお願いいたします。

    ※1
    国立感染症研究所:ポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)とは
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000036493.html(2021年3月2日アクセス)
    ※2
    法務省:平成30年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(確定値)
    http://www.moj.go.jp/isa/publications/press/nyuukokukanri04_00080.html(2021年3月2日アクセス)
    ※3
    日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの変更点, 2020年10月1日版
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/vaccine_schedule.pdf(2021年3月2日アクセス)
    ※4
    佐々木津 他:小児科臨床68(8):1557-1567, 2015
    ※5
    European Center for Disease Prevention and Control:Vaccine Scheduler
    https://vaccine-schedule.ecdc.europa.eu/Scheduler/ByDisease?SelectedDiseaseId=4&SelectedCountryIdByDisease=-1(2021年3月2日アクセス)
  • イメージ
医療従事者向けの情報はこちら