
予防はいつするの?
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大分県竹田市
大分県竹田市での不活化ポリオワクチン(IPV)の
就学前の5回目追加接種に対する接種費用公費助成への取り組み子育て支援のため小児科診療所を開設、
竹田市長 首藤 勝次 氏
接種費用公費助成でポリオを予防竹田市は2005年に旧竹田市、旧荻町、旧久住町、旧直入町が合併して誕生しました。岡城とその城下町を擁する竹田、トマトの生産量で知られる荻、美しい高原がある久住、世界でも数少ない炭酸泉を誇る直入と、旧市町それぞれの魅力が一つに結集された市であり、大分県屈指の農業が盛んな地域でもあります。若い世代や団塊世代に農村の魅力を広め移住(回帰)を後押しするために、全国に先駆け「農村回帰宣言」を掲げ、地域活性化を目指して移住支援策を展開しています。
移住や定住をしていただくためには、若い世代や子どもが暮らしやすい環境づくりが重要です。まず、市内に常勤の小児科医がいないという問題点を解消するため竹田市立こども診療所を開設し、さらに、5歳児健診を導入して発達障害児の支援なども行っています。また、予防医療にも力を入れており、豊富な温泉資源を活用し、温泉利用料の一部を還元するなど市独自の温泉療養保健システムを作って、市民の健康維持や増進を図ってきました。
そうした予防医療への取り組みの一環として、ワクチン接種費用の公費助成も行っています(図)。2007年から水痘、おたふくかぜのワクチン接種を無料化し、2013年からB型肝炎、2015年からロタウイルスのワクチン接種費用に対する公費助成を開始しました。ワクチン接種への助成の重要性については、竹田市立こども診療所の先生方からさまざまな助言をいただいています。ポリオに関しては、不活化ポリオワクチン(IPV)の5回目追加接種の重要性について提言があり、2020年度から接種費用の公費助成を始めました。日本の子どもたちをポリオから守るためにも、IPVの5回目追加接種に対する接種費用公費助成が各地に広がっていくことを期待しています。【図】竹田市の任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成
後遺症が一生残り得る疾患を
竹田市立こども診療所 所長 高野 智幸 先生
追加接種で防ぐ当診療所は、2009年に竹田市によって保健所内に開設され、2019年に独立し現在の場所に新築移転しました。自治体が運営する小児科単科の診療所は全国的にも珍しく、児童公園にも隣接していることから、子育て世代には重要な場所になっていると思います。
竹田市は、子育て支援に力を入れており、ワクチン接種費用の公費助成にも積極的に取り組んできました。通常、任意接種は定期接種と異なり自己負担がありますが、助成によって無料で受けられることで、我われ医師から保護者に接種の提案がしやすく、保護者の皆さんも提案を受け入れやすい環境となっています。2020年度からは不活化ポリオワクチン(IPV)の5回目追加接種も無料化されました。
ポリオは、四肢に麻痺の症状があらわれると、後遺症として一生残る可能性がある疾患です※1。一部の国では現在もポリオ患者が報告されており、世界的には根絶できていません※1 。
ワクチンにより日本でポリオ患者の報告がないのは良いことですが、例えば、同じように一見収束したかのように見えた麻しんは、感染しないことで麻しんに対する免疫が減弱し、10代や成人に発症する事例も報告されています※2。ポリオでも同じことが起こり得ると考えられます。IPVの就学前の5回目追加接種が無料でできるようになったことは、接種率の向上が期待でき、ポリオを予防するために非常に意義のあることだと考えています。
竹田市 社会福祉課インタビュー
安心して国際交流するためにも
接種費用公費助成で接種率向上を竹田市 社会福祉課 課長 宮成 公一郎 氏
現在、日本ではポリオ患者は1980年の発生を最後に報告がなく、排除状態にあります。しかし、海外ではまだいくつかの国でポリオの発生が報告されています※1。「農村回帰」を推し進めている竹田市では外国人技能実習生も活躍しており、ポリオウイルスの持ち込みを心配する方もいるかもしれません。IPV5回目追加接種の接種率を上げることは、ポリオから身を守るだけでなく、ポリオの発生が報告されている国への偏見防止にもつながり、ひいては地域振興にも関わると考えています。
竹田市は韓国や友好姉妹都市であるドイツのバートクロツィンゲン市との交流が盛んで、中高生が相互にホームステイするなどの交流も続けられてきました。今後も安心して国際交流に取り組むためにも、IPV5回目追加接種に対する接種費用公費助成を行い、接種率を上げることが重要です。
竹田市 社会福祉課 子育て包括支援センター 伊藤 さおり 氏
竹田市では、不妊治療や不育治療にも公費助成をしており、出生前の段階から子育て支援を行っています。少子高齢化が進むなか、子育て支援の強化は市民の理解も得られ、高齢の住民からは地域の宝である子どもたちに温かい眼差しが注がれていると感じます。
2009年に竹田市立こども診療所が開設されて以来、市内で子どもへの医療が提供できるようになり、子育て世代にとって、診療所はもはやインフラといえるほど欠かせない存在になっています。公費助成によりワクチンで防げる感染症から子どもを守ることは、自治体の重要な役割であると考えています。こちらの情報は取材当時のものです。
ロタウイルスワクチンは2020年10月から定期接種になりました。
最新の情報は、各市区町村へご確認をお願いいたします。 -
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/386-polio-intro.html(2021年3月2日アクセス)
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA-2.html(2021年3月2日アクセス)