予防はいつするの?

予防はいつするの?

  • イメージ
  • 大分県津久見市

    大分県津久見市での不活化ポリオワクチン(IPV)の
    就学前の5回目追加接種に対する接種費用公費助成への取り組み

    最優先すべきは
    将来を担う子どもの健康

    津久見市長 川野 幸男 氏
    川野 幸男

    津久見市は、石灰石とセメント産業を核として発展してきた町です。人口減少を防ぐために「まち・ひと・しごと創生津久見市総合戦略」を掲げて、子育て世代に選ばれる町を目指しています。津久見市には小児科が少なく、隣の市や大分市まで足を運ばなければならないため、保護者の経済的・時間的負担は小さいものではありません。そこで、まず、経済的な支援が必要であると考え、子育てに関する支援として、医療費助成の対象を中学生まで広げました。

    本当に重要なことは、子どもが何ごともなく健康なまま年を重ねて成長していくことです。子どもを感染症から守るため、任意接種ワクチンの接種費用公費助成を積極的に行ってきました。その一環として2020年度から、不活化ポリオワクチン(IPV)の5回目追加接種を、市内の医療機関であれば無料で受けられるよう接種費用公費助成を開始しました。

    予防接種は接種率に意識が向きがちですが、割合だけで考えてはならないと思っています。罹らなくてすむ病気に“罹る”か“罹らない”かは、1人のお子さんにとっては“1分の1”か“1分のゼロ”であり、全く意味が異なるのです。怪我であれ、病気であれ、“何ごともない=ゼロ”であることが大切で、1分の1になるのを防がなければなりません。

    市の財政は厳しいですが、最優先すべきは将来を担う子どもの健康です。火事が起きてから消火をするのと、火事が起きないように対策をして防ぐのとでは、どちらが重要かは明白です。病気も同じことです。何を優先すべきかを考えれば、接種費用の公費助成は行うべきであるという結論になると思います。

    【表】津久見市で実施している任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成

    津久見市で実施している任意接種ワクチンに対する接種費用公費助成

    市報や講演会で不活化ポリオワクチン(IPV)の
    5回目追加接種の重要性を啓発

    小宅医院 副院長 小宅 民子 先生
    小宅 民子

    当医院は1898年に開業し、明治から令和まで122年にわたって、内科・小児科の診療所として地域に根ざした医療を提供してきました。院長が内科を、私が小児科を担当し、患者さんの中には、祖父母、親、子どもと3世代にわたって受診している方もいます。

    津久見市医師会では、2015年頃まで、市民を始め、幼稚園や保育園児、学校の教員、市の職員、医師、コメディカルなど様々な人を対象に、子どもの病気に関する講演会を月1回開催してきました。その回数は100回を超え、私も講師を務めて予防接種の重要性についてお話ししてきました。このような活動の結果、市民に予防接種に関する高い意識が根付いていることを期待しています。日本小児科学会が、IPVの5回目追加接種を推奨したときには、市の保健師の方に接種費用公費助成を提案したところ、市も関心を示していただき、この度の公費助成の実施につながりました。

    また、市報では中津市立中津市民病院の是松聖悟先生とともに「こどもの病気対策法」を連載しています。2019年に市報でポリオについて取り上げ、就学前のIPV5回目追加接種を推奨しましたが、当時は自費であったためか、接種に至ったのは1件にとどまりました。IPV5回目追加接種に対する接種費用公費助成が開始された2020年4月の市報では、予防接種をテーマにしました。IPV4回目追加接種によるポリオウイルスに対する免疫は、小学校に入学する頃には弱まるといわれていること、東南アジアの国などでは、まだポリオ発症者がいることを紹介し、IPV5回目追加接種の意義について解説しました。

    2020年に開始されたIPV5回目追加接種の公費助成は、保護者の経済的負担を減らし、感染予防につなげる大きな意義があると思います。今後も予防接種の啓発のために、ポスターや小冊子を活用し、園医として幼稚園や保育園を訪問する際に教職員に重要性を伝えていきたいと考えています。

    津久見市 健康推進課インタビュー

    乳幼児健診でワクチンの重要性を伝え、個別通知で接種を勧奨

    津久見市 健康推進課 課長 川野 明寿 氏

    津久見市では、2012年度に水痘ワクチンとおたふくかぜワクチン、2016年度にインフルエンザワクチン、2017年度にはロタウイルスワクチンとおたふくかぜワクチン(2回目)の接種費用に対する公費助成を始めました。また、2020年度からは、新たにIPVと3種混合ワクチンの就学前追加接種に対する公費助成も始めました。

    予防接種の重要性について、出生後の手続きや乳児の全戸訪問の際に説明し、接種時期には対象のお子さんへ個別に通知しています。乳幼児健診の際には母子手帳を確認し、未接種のワクチンがある場合は接種を勧めています。また、健診未受診者に対しては、電話をかけてワクチン接種の確認を行っています。

    就学前のIPV5回目追加接種については、接種時期が重なる麻しん・風しん混合ワクチンなどと併せて個別通知を行っています。IPV5回目追加接種は公費助成が始まったばかりですが、すでに接種を受けた方がいます。今後、接種率が向上し、ポリオから子どもたちを守れる環境になることを期待しています。

    こちらの情報は取材当時のものです。
    ロタウイルスワクチンは2020年10月から定期接種になりました。
    最新の情報は、各市区町村へご確認をお願いいたします。

  • イメージ
医療従事者向けの情報はこちら